インタビュー記事
「自分たちの会社の未来というのは社員みんなでつくるんだ」と思って、行動を起こしてくれる人を一人でも増やしたい。
日東電工ベースマテリアル株式会社(旧社名:日東電工CSシステム株式会社)
代表取締役 松田 純一様
株式会社ペンシル 代表取締役社長 倉橋 美佳
はじめに、日東電工さんの事業について簡単に教えていただけますか?
- 松田様
- 1999年の設立当初は日東電工包装システムという名前で包装材・包装テープの販売が中心でしたが、今では取り扱いの幅が広がり様々な工業材の比率が増えています。
全国津々浦々のお客様に対して独自の販売経路を中心に、チャネル販売やデジタルを活用した商談を行っています。お受けした受注について、カスタマーセンターにてより集中して、より細かいサービスを提供しているという会社です。
最初にペンシル福岡のオフィスにご来社いただきました。どのようなきっかけだったのでしょうか?
- 松田様
- ペンシルさんとは元々はWEB関係で、いろいろアドバイスいただくところからスタートさせていただきました。
実は、ペンシルさんに相談する前、毎月の社内会議の中でWEB周りの話を聞いても、なかなか苦戦しているなという印象を受けていました。社内ではWEBを活用する経験が乏しいのですが、なんでも自前でやろうとしているところがあったので、私から「外部の力を借りては?」というアドバイスをしました。それで、いろいろとサービスの調査をした結果、ペンシルさんと進めさせていただくことになりました。
1年くらい経って、果たして本当に「テープという商材の売上が劇的に増えるものか?WEBはうまくいくか?」と疑問に思い、直接お話を聞きに行こうと思ってペンシルさんにお伺いしました。結果としては、「心配ないです。力の入れ具合やマンパワーの問題など課題はあるので、改善していく必要はありますが、必ず売れます」と言っていただき、その点については安心しました。こうして話をしていく中で、引き続き伴走をお願いしたいなと思った次第です。
お伺いしたときにエンゲージメント調査※の話になり、ペンシルさんの社内でも時間をかけていろいろと手を打ってこられて、徐々に改善されて、今は結果も好調になっているという話を聞かせていただきました。その話を聞いて「あぁ、そうか、やり方によっては、組織の状況は劇的に変わるんだ!」と勇気づけられました。
ぜひその経験を社員にも聞かせていただきたいなと考え、一度社内でセミナーしていただきたいというご相談に至りました。
※組織のエンゲージメントを測定し、組織の現状を可視化する仕組み。課題を改善することで組織のパフォーマンスアップを目指す
社内向けセミナーを決めたことがスタートだったかと思いますが、DX経営推進プロジェクトに"挑戦しよう"と決意した際のお考えはどのようなものでしたか?
- 松田様
- 何もしなかったら何も変わらないという考え方が大きかったです。失敗するかもしれないけど、失敗はよりよくするための一つの方法だと捉えています。倉橋社長に社員向けのセミナーをしていただいたのですが、そのときは管理職を中心に聞いてもらいました。セミナー後の感想や聴講している様子を見ていると、社員も関心を持っているのだなということを実感できました。それを見て「きっと上手くいく」という自信も少し出てきました。
また、社員は外部の方々との接点が少なく刺激が足りていないということも、非常に痛感しました。社内を変えていくことは、当然我々役員だけが取り組むのではなく、社員と一緒に取り組んで進めたいと思っています。だからこそ、彼らにもいろいろと教えてあげたいし、いろいろな新しいことを知って理解できたら考えや行動が変わり、それが社内の空気を変える動きにつながると考えました。そこでDX経営推進プロジェクトをぜひやろう、挑戦しようと決断できました。
- 倉橋
- たしかにセミナーのアンケートで「取り組みたい」意向の方が多かったですね。変えていけそうという実感を持てたことで松田社長も決断ができたということですね。
プロジェクトは会社の思想の軸となるNDスピリット※をつくるところからスタートしました。最初にNDスピリットが完成したときはどのように感じられましたか?
※Nittoグループの経営理念をもとに日東電工ベースマテリアル株式会社の行動指針として示した従業員に共通する想いや心の拠りどころ
- 松田様
- ペンシルさんに入っていただく前に、私たちが成し遂げたい目標や目指す姿を表す言葉づくりに取り組んでみましたが、なかなか進まない状態でした。
ところが、伴走してサポート・リードいただいて整理してみると、いろいろな案が出てきました。案を考えながら、削りながら、添削しながら、質問しながら、NDスピリットが完成したときには非常に達成感がありましたし、良いものができたと思いました。自分なりに想いを形にできたということは非常に良かったです。また、しっかりと社員にお披露目もできて良かったなと思います。
こういう立場になるまではあまり考えたことはなかったのですが、NDスピリットを考える前の段階で、「言葉の持つ重み」というか、「言葉が繋ぐ」ということがあるのかなと考えるようになってきました。今では会社にとって道標を表す言葉というのはとても重要だなと思います。経営理念だけでなく、それを補完するもっと社員に近しい、親しみのある、身の丈にあった言葉、表現が必要だと感じます。それらをこれから時間をかけて浸透させていければいいなと思います。
できあがったNDスピリットを発表した際の社員の皆さんのリアクションをどのように受け取られましたか?
- 松田様
- 一度聞いただけでは、全部は理解できていないし、腹落ちもできず、ふわっと受け止めたという印象でしたね。
これまで寄せてもらっていた意見に対して、応えるようなアクションが完全にはできていない中で、新しい話をしたことで唐突感や違和感を感じたのだろうと思います。もちろん「何かを変えようとしているな」とか「変わろうとしているな」と期待感を持ってくれた人もいました。
人によって受け取り方は様々だったと思いますが、NDスピリットがしっかりと心に届くには少し時間がかかるのかなと感じています。ただ、悪い印象ではなかったです。今回、反応してくれた方々もいましたし。
- 倉橋
- アンケートでも賛成や期待の声も多くありましたね。じっくり向き合いながら、取り組んでいきましょう。
NDスピリットを全社に発表したあと、リーダー層の方々とのワークの実施や御社独自のエンゲージメント調査の取得も開始しました。実際にエンゲージメント調査を実施し、結果データの読み解きをし、アクションプランをつくるというフローを進めてみて、いかがでしたか?
- 松田様
- リーダーたちは非常に一生懸命やってくれています。
少し反省点があるとしたら、自部署のメンバーに業務を落としていくときに自責になりきれていないがところが一部あったかなと思います。お願いしているこちらの至らない部分も多々あり、「メンバー層への伝え方や話し方」を十分にリーダーに伝えきれていない部分がありました。
何かを進めていこうと思ったら、ていねいに時間をかけて伝えていかないといけないと思っています。
- 倉橋
- そうですね。ていねいに伝えていく必要がありますね。ありがとうございます。
リーダーの方々と一緒にワークをさせていただきました。松田社長から見て変化を感じられたことはありますか?
- 松田様
- みんなで集まって討議することは大事だなと感じました。
業績だけ上げていればいいわけではないので、業務上の繋がりだけではなく、もっと心に届くことをやっていくことが重要だと思います。みんな自分の心の内で思っていることはあるのですが、これまで口に出して言う場もなかったのが、協議できる場ができたというのは良かったと思っています。
- 倉橋
- 役員の皆さんと大事にしている行動規範をディスカッションしたときに"思いやり"という言葉が多く出てきました。そういったところが少しずつ広がっていけばいいですね。
1年以上、DX経営推進プロジェクトをご一緒してきました。振り返ってみていかがですか?
- 松田様
- 独りよがりや自己満足のところもあるかもしれませんが、この1年はNDスピリットができて発表ができて、私自身は内容に非常に満足しており、達成感があります。つくることが目的ではなくて、浸透して社内の空気を変えていくことが目的なので、その意味ではまだまだ道半ばというところですね。
自分たちの反省点として、別のプロジェクトが並走しており、なかなかリーダー層との取り組みに集中できない状態がありました。一方で女性活躍推進を進めるべく、女性管理職の皆さんへお願いして働き方などについて検討してもらったりと、様々なメンバーに対する取り組みを進めていくことで、倉橋社長に教えていただいた「ファーストフォロワー※」がどんどん広がっていくのかなと思っています。
多様な人間がいて価値観ややり方が違う部分もあり、全員が期待どおりに動いてくれるわけではなく、心が折れそうになることもあります。でも、ネガティブなことを言っていても仕方ないので、逆に意見をすり合わせていくことで、先行きの期待が持てるかなと思っています。
※リーダーが示した行動に勇気をもって支持し、サポートしてくれる存在
今後、ペンシルに向けてどういうところを期待しますか?
- 松田様
- ペンシルさんにはぜひ一緒に考えたり、行動したりして、叱咤激励いただきつつ伴走いただければと思います。自社だけでやっていると、どうしても多少緩んでしまうところがあります。今まで経験がないことなので、この経験が次に繋がることを期待しています。
また、少しでも自前でできる形にできたらなと思います。一緒にプロジェクトを行った人間が、次は「自分が先生になって、伴走者になって下の人を引っ張る」という会社にしていきたいと考えています。
今後とも厳しく優しくご指導いただけたらと思います。
- 倉橋
- はい、ぜひ一緒に進めていければと思っています。ありがとうございます。
今後社員の皆さんとの動きも活発になっていく予定です。社員の皆さんに向けて期待していることがあったら教えてください。
- 松田様
- 会社が決めたことや指示されたことしか動けない、そういう指示待ちの考え・行動・姿勢から脱却していきたいと思います。「自分たちの会社の未来というのは社員みんなでつくるんだ」という想いを持って、行動を起こしてくれる人を一人でも増やしたいです。そこが変わっていけばエンゲージメントスコアも自ずと変わっていくと思います。
- 倉橋
- はい、社員みんなで空気を変えていける会社になったらいいですね。
最後に、同じように会社の組織を変革しようと思っている企業さんに向けて、松田社長からアドバイスをお願いします。
- 松田様
- 何もしなかったら何も変わらないので、やっぱり踏み出すことが大事だと思います。
悩んでいる時は自前でなんとかしようと考えがちですが、やっぱり外部の力を活用するという選択肢もあると思っています。もちろんお金をかけるべきなのかという議論もありましたが、自社内だけで考えていると、どうしても既存の発想からなかなか脱却できません。なので、ペンシルさんのような外部に協力をお願いするというのは最終的には変わるための近道だと思います。
皆がどんどん外部と接点を持って、自分のところがいかに遅れているか、自分の考え方がいかに狭いかを、理解することも大事だと感じます。
- 倉橋
- 今後ともペンシルがみなさんのご期待に添えるように、しっかり伴走させていただきます。
今日はインタビューのお時間をいただきまして、ありがとうございました。